Hさんからツーリング用の自転車を作ってほしいとの依頼がありました。宿泊ツーリングに行けるようにフロントバッグとサドルバッグを付けて走れる自転車 軽くてブレーキが良く効いて変速は楽なのが良い。泥除けも状況によっては欲しいかも というご依頼でした。
普通でしたら、最近はやりのグラベルロードをツーリングに使いやすいようにアレンジしてお渡しするという方法もあるのですが、(予算的には一番楽になります。)Hさんの身長は150cmと少し。今まで乗っておられたアンカーやコルナゴのロードバイクは一番小さいサイズにしてステム長さを50mmに変更 なんとか適正ポジションにできるという感じでした。
小さいサイズのフレームの難点というのは何か知っておられますでしょうか? フレームサイズと思われるかもしれませんが、実はトップチューブ長なのです。一番短いステムを付けてそれでもハンドルが遠い状態で乗っておられる方、実は多いです。(リーチと言われるかもしれませんが、シートアングルを75度で固定と考えます。)
実のところ700Cのホイールで25Cを使うと仮定すると、トップチューブ長500mmぐらいが限界なのです。要はトップチューブを短くしようとすると、前輪も近づいてくる 結果ハンドルを切るとつま先と前輪が当たるという事になるのです。市販されているフレームの中には、あえて操縦安定性を取って前輪とつま先が当たる自転車がありますが、ほぼ競技用の尖ったモデルです。ツーリング用の自転車では好ましくないサイズとなります。(フレームサイズが一番重要と思われるかもしれませんが、フレームサイズはスローピングさせれば350mmぐらいまでは可能です。要は格好を言わなければどうにでもなります。)

で今回、フレームからオーダーさせて頂くことにしました。今回は大阪のソウカワガレージさんのCornerでオーダー。当店で3本目のCornerとなります。

シートアングル74.5度 トップ490mm水平換算 フレームサイズ420mm というサイズです。先ほどトップチューブ長500mmぐらいが限界と書いていたのにシートアングルが寝て490mmとはどういうこと?と思われるかもしれませんが、実は秘密があります。ホイールサイズが650Bなのです。最近のMTBの規格で言う27.5ですね。その650Bのホイール(700Cに比べて半径25mmくらい小さくなります。)に25Bのタイヤを履かせます。タイヤ外径がかなり小さくなりますからトップチューブ長も短くできますしハンドル位置も低くできるのです。
今回、たまたま良質なタイヤ コンチネンタルグランプリ5000と東京サンエスさんの650B用カーボンフォークがあった事から650Bという ある意味昔からのツーリングしてる方からは王道ともいえる650Bのフレーム作ることが出来ました。
フレームビルダーの寒川さんも、こちらが指示しなくても細目のチューブを使って剛性をうまくコントロールして頂いています。
ちなみにこのサイズのフレームだと良く問題になるのがボトルケージの位置 フレーム製作にかかる前にボトルケージを送らせて頂いて、2か所のボトルがどちらもフレームに干渉せず抜き差しできるように位置調整して頂いています。

フレームカラーですが、実はオーダーする上での一番の鬼門なのです。印刷物の写真でこの色とか指定すると まず思った通りの色になりません。今回の塗装は、当店の協力工場で、ジュースの缶に色を吹いてもらって、もうちょっと明るくとかラメを入れてとか微調整をしたのち、ソウカワガレージに色見本の缶を送付 実際の塗装はクックペイントさんにお願いしております。

で、完成した状態がこの写真となります。アルテグラのDi2に油圧ディスクで8.4㎏ 特別軽い部品は使っていません。ギヤ比だけは使いやすいようにスギノのクランクで46×30Tにスプロケットがアルテグラ11-28T 下りで飛ばさないとの事なので、低めのギヤ比です。
荷物を付けて、ライトやメーターなど装備を付けるとこんな感じとなります。

ホイールサイズを小さくしたことは、サドルバッグを取り付ける選択肢が増える事にもつながります。この手のサドルバッグの中ではオーストリッチが高さが一番低いぐらいなのですが、700Cホイールだと完全に擦ってしまいますが、このサイズだと隙間ができます。といっても、荷物の載せ方によってはタイヤとこすることもあるので、下の写真の様な簡易キャリアも用意してあります。

このサイズだと輪行時に取り外さなくても大丈夫ですし、バッグとタイヤが当たらないという役目だけでしたら十分機能します。
ライトとテールランプはフレームのダボを利用してバンド無しで固定できるようにして有ります。

あとは、Hさんがこの自転車を乗り倒してくださるのを楽しみにしております。

オーダーは難しい事ありません。シンプルにこんな使い方をしたいとか言って頂ければ、ご希望に沿うような自転車をおつくりすることが出来ると思います。
今回のHさんの自転車は要求されるスペックが高くて良いお値段になってしまいましたが、オーダーフレーム 案外安いです。というか作る工程や手間を考えると恐ろしく安く感じます。
当店で扱いのあるフレームオーダー先ですが

  • TOEI社 スタンダードフレームだと、フォーク塗装込みで15-20万円ぐらい。
  • Corner ソウカワガレージ フレームのみ塗装無しTig溶接で18万円ぐらい。フォークと塗装を凝ってフルフィレット溶接となると30万円前後となります。
  • しまなみ自転車工房 HIKO しまなみ海道の大三島に工房があります。フォーク塗装込みで20万円ぐらいから。

完成車にすると、使う部品にもよりますが、TOEIスタンダード105セットorGXRセットでブレーキのみリムブレーキでしたら税込み40万円を何とか切るぐらいのご予算から完成車にすることもできます。ご相談頂けましたら お値段を含めいろいろとご提案ができると思います。